神奈川県のバレーボール一貫指導において、戦力分析担当の活動としては対象選手への戦力分析内容の紹介及び練習、練習試合、試合での活用を実施しました。
一貫指導の練習会において、添付資料「バレーボールの戦力分析」を用いて、バレーボールの戦力分析の目的及び分析項目、データの紹介、解析ソフトの紹介などを行い我々の活動への理解を深めました。
一貫指導女子チーム平成2008年2月の強化練習会において、自チームのアタックデータを収集し、トスの割り振りを解析し、トスがレフトに偏りすぎていることをセッターに伝え、その改善を指示しました。
図1−1、1−2に指示前のセット(仮に1セット目とする)のアタックデータ、図2−1、2−1に指示後のセット(仮に2セット目とする)のアタックデータを示し、図1−1、2−1は試合の流れに沿ったアタックデータの変化を示しました。図中左右にある数字は各チームの得点を示し、図1−1では25対17で、図2−1では25対23で一貫指導チームが勝ったことを示しています。
縦に表示した5本の点線はどこからアタックが行われたかを示す補助線で、一番右側の線から短い線が書かれている場合はレフトからアタックが行われたことを示し、真ん中はセンターから、一番左はライトからアタックが行われたことを示しています。
このデータから試合の流れに沿ったトス廻しの分析が可能であり、図中の個々の短い線はアタックが打たれた方向を示しています。
図1−2、2−2は各個人あるいはローテーションごとのアタックの分布及び決定率などを示しています。各図の上段の数字は各打点位置からのアタックの決定数と打数を示しており、各図の右側にある数字はその図の合計の決定数、打数および決定率を示しています。
また、図中の線はアタックがどこからどの方向へ行われたかを示しています。上2段は個人データで例えば図1−2の上段左から3番目の図は、バックナンバー3の選手がセンターから4本アタックを打ち、3本決定し決定率が75%であり、その打球方向は図に示した線のようであることを示しています。
また、最下段はローテーション1から6までの全ての選手のアタックデータを示しています。この図の下側にある数字は各ローテーションでの打数の多い選手2名のバックナンバー、決定数、打数、決定率を示しています。
図1−1から明らかなように1セット目ではレフトからの攻撃の割合が多く、トスの偏りが見られます。バレーボールのゲームにおいてはレフト、センター、ライトへトスを適切に割り振り、どのような攻撃を行うかを相手に予測させないことが重要です。
筆者はアナリストとしての長年の経験から高レベルのチーム同士の対戦では、トスをレフト、センター、ライトへあげる割合を4対3対3程度にすることが理想的であると考えています。そこで、既に述べたようにトスがレフトに偏りすぎていることをセッターに伝え、その改善を指示した。指示後の2セット目(図2−1)ではセンターの割合には変化が無いが、ライトへのトスの割合が増え、全体のバランスが改善されているのがわかります。
表2は指示前後のトスの割り振りの割合を示しています。指示前はレフトの割合が67%であったのが指示後には54%まで減少しているのがわかります。ここに示すような定量的なデータを示しながらの選手への指示がすばやい改善に有効であると考えられます。
表2 トスの割り振りの変化
1セット目 (指示前) | 2セット目 (指示後) | |||
本数 | 割合 (%) | 本数 | 割合 (%) | |
レフト | 18 | 67 | 21 | 54 |
センター | 7 | 25 | 10 | 26 |
ライト | 2 | 7 | 8 | 21 |
一貫指導チームが出場した、皇后杯予選において相手チームの分析を行い、攻撃の集中度合い、決定率などを求め、マークすべき選手を明確にし、データとともに監督に伝達し試合での活用を図りました。
今回の一貫指導においては若年層からバレーボールの戦力分析に関しての理解を深めておくことの重要性を考慮して、戦力分析への理解を深めるための活動及び練習や試合などでの活用を図るための活動を行いました。ここでは活動を実施した期間が必ずしも十分でなかったため、選手の理解度のチェックや効果の検証などを十分行うことは出来ませんでしたが、将来において、選手各個人が活用する際の一助になればと願っています。