7、技術指導内容
(1)サーブ
1)サーブ技術
サーブはゲームを開始するプレーであり、ゲームを有利に展開するための重要な技術の一つです。相手のサーブレシーブを崩すことは、相手の最初の攻撃を十分な形にさせないための有効な手段であり、相手の攻撃をディグできる可能性が高くなります。
またサーブは、バレーボールの中で唯一、自分ひとりでポイントを上げられる技術であり、ひとりの力でゲームの流れを十分変えることができます。狙った所へ、スピードのあるサーブを確実に打てるようにしましょう。
サーブはすべてを自分でコントロールできる技であり、相手に対する最初の攻撃です。
2)サーブの基本
@ ねらう位置を確認しサーブを打つ位置を決める。
A ボールを持ってリラックスした状態をつくり、
サーブを打つミートポイントにセットする。
B サーブを安定させるためには、トスが左右前後にぶれないように上げるようにする。
C ミートポイントが、体の面より後方にならないようにする。
D ボールをミートする部分は、手のひらの中心に当てなるべく手のひらの全面で打つようにする。
E 無回転ボールはボールの中心でミートし、回転ボールは中心を少し外して打つようにする。
F サーブの動作は、一定のリズムでスムーズにおこなうことが大切である。
3)サーブ技術の習得系列
・アンダーハンドサーブ
・サイドハンドサーブ
・オーバーハンドサーブ
・ジャンプサーブ
・スピン 無回転
・コントロール
・スピード
サーブを球種・回転から分けると大きく2種類に分けられます。
@ 変化系
A スピン系
また、サーブの種類としては大きく4種類に分けられます。
@ アンダーハンド・サイドハンド
A テニス式フローター
B オーバーハンド(変化球)
C ドライブ(剛球)
4)ボールの回転
ボールに回転をかけるのか、かけないのかによってサーブの球質は異なります。ボールを無回転で打つためには、ボールの中心を正確にヒットすることが重要なポイントになります。極端にいえば、どんな打ち方をしてもボールの中心を正確に打てばボールは無回転で相手のコートに飛んでいきますし、少しでも中心からずれると、ボールは回転します。ボールが無回転で、ある一定のスピードに達すると、抵抗の変化のためにボールが非常に変化しやすい状態になります。そのため無回転サーブは、レシーバーの予測できない変化を起こすわけです。
回転サーブの場合はマグヌス効果により回転している方向に変化して行くことがわかっています。ボールの回転方向がわかると、ある程度の変化の予測は可能です。回転のかけ方は、ボールの中心を外して、手首を回転方向にひねりながら力を加えるとうまく回転を加えることができます。回転が加わると無回転サーブよりも初速と終速のスピードは落ちませんのでレシーバーが、ボールのスピードを早く感じます。
5)打ち方の説明
@ アンダーハンド(初級)
打つタイミング及び体重移動を理解させるため、体の上手な使い方を覚えさせます。これは主に初心者のサーブの導入に用います。
[打ち方]
両足を前後に開き構えます。または、サーブ動作を開始しながら利き足をだし、打ちたい方向へ前足のつま先を向け状態をやや前傾させ、へその前でボールを構えます。ヒットする方の腕をしっかりと伸ばしからだの向きと同様の方向へスイングし、後ろ足から前足に体重移動させながら、へその前方のボールをトスを上げずに送り出すような感覚で空いてコートを打ちます。ヒットする手は、掌を広げるよりも軽く拳を作ったほうがボールは弾みます。なお、ヒットする際に肘を曲げたり、腕を横に振ったり、体重が後ろ足に残ってはいけません。
A テニス式フローター(通称:フローター)
アンダーハンドサーブの打ち方(体の使い方)を理解したら導入します。
[打ち方]
アンダーハンド同様に両足を前後に開き構えます。または、サーブ動作を開始しながら利き足を出し、打ちたい方向へ前足のつま先を向き、肘をやや曲げた顔の前でボールを構えます(コースがねらい易い)。トスの高さは自分の額のやや前方に上げます。トスを上げると同時にヒットする手を準備し、ボールが最高到達点に来た時点で体重移動と同時にヒットします。その際、前足に重心がしっかりと乗っていることに注意することです。
応用:ジャンプフローター
ジャンプ(スパイク)サーブはスピードとコースによってはチャンスボールとなります。特にスピードは大きな武器です。しかし、スピードが出せないプレーヤーは、ジャンプ(スパイク)サーブからジャンプフローターサーブに変えて良いでしょう。このサーブは、相手に対して前後の感覚を惑わせる効果があります。
B オーバーハンド変化球(通称:スライダー)
このサーブの特徴は状態がネットと垂直になるように構え、骨盤(腰)の回転と腕の遠心力を利用してネット方向へ打ち出すことです。ボールを投げる時の動きと同様に、打ち方時に身体の捻りの動作を必要とするので、初心者にはボールをヒットすることが難しいが、ボールを正確にヒットすることができれば、フローターと異なった変化が見られます。まずは、前後の体重移動に慣れてきてから導入することが望ましいでしょう。
[打ち方]
両足を肩幅よりやや広くスタンスをとり、ネットに対して垂直(横向)になるように構えます。トスボールは主に2種類あり、ネットに対して前方から後方へ、または、後方から前方へヒットポイントが安定するようにリリースするように上げます。トスを上げると同時にヒットする手を準備し、ボールが最高到達点に来た時点で体重移動と同時にヒットします。その際、投げる動作と同様に骨盤(腰)を回転させ、腕は円の運動を意識し、肩は若干遅く動かし、肘を後ろ側に引っ張るようにスイングし、ボールを性格にヒットするポイントを探します。なお、前足に重心がしっかりと乗ってから円の運動を用いてスイングすることに注意します。その体重移動のタイミングがずれると肩が早く前方を向いてしまい、バランスを崩し遠心力が利用できなくなるので注意します。なお、導入段階では、体重移動をせずに横を向いたまま、顔の前でボールをヒットし徐々に体重移動して打つようにすると良いでしょう。
<チェックポイント>
[準備]
・ トスを安定させる
・ トスアップとスイング動作開始のタイミング
[ヒッティング]
・ ボールの芯を性格にヒットしているか
・ ヒットポイントを安定させる
[フォロースルー]
・ ボールコントロール(スピード・コース・変化:無回転)
C オーバーハンドドライブ
このサーブの特徴は、ボールに強烈なドライブ回転を掛けスピード及び変化を狙い力強く打ち出すサーブです。
[打ち方]
構え方は、通常のオーバーハンドと同様です。しかし、トスは通常の変化球のサーブより高く上げます。トスを上げると同時に後ろ足に体重を移動しながらヒットする方の腕を後方の腰下に引っ張るように準備します。トスを上げるタイミングネット方向に伸び上がるようなイメージで前足に体重移動します。スイングは円の運動を意識し、遠心力を利用してできるだけ大きくスイングします。ドライブサーブのリズムは、1・2・3のリズムをつくることです。
1の時点で両足を安定した状態でトスを高く上げます。2の時点で十分に後ろ足に体重を乗せタメをつくり落下ボールを待ち、ヒットする腕を後ろ足のハムストリングスの部位でやや肘を曲げ掌を広げてヒットできるように構えます。3の時点でトスボールが落下してくるタイミングを計り、前足に踏み込みながらスイングを開始し、ボールヒット時にネット方向(前方)にもち運ぶように思い切り振り切ります。フォロースイングとして、後ろ足から前足に完全に乗り後ろ足は、踵が臀部に触れるくらいまで力強く蹴り上げます。
D ジャンプスパイク
スパイクの要領で打つサーブです。
[打ち方]
スパイク時同様に助走を行うため、トスボールをリリースし易い状態で構えます。トスボールは主に2種類あり、トスボールに回転を掛けないように上げる方法と事前にボールに回転を掛けるため片手でボールをリリースするように上げる方法があります。トスをリリースすると同時に最初の一歩目を踏み出し、ボールが最高到達点にきた時点からトスボールがやや落下した時点でヒットします。その際、ジャンプが前方に流れるため、打つポイントがブレ易いので注意します。
なお、ネットに対して9m(エンドライン)より後方から打つため、ネット上まで打てるコツを自分自身で見つけます(ヒットポイントからネットを越えるまでの目測をつかむ)。ボールをヒット時に力を入れすぎるとミスが生じやすいので、80%の力でヒットすると良いでしょう。また、ボールにドライブ回転をきちんと掛けられるようになればヒットの瞬間に手首を捻ったりしてボールに回転を掛けてコース打ちができます。ジャンプサーブで重要なのは、できるだけ前へジャンプし、ヒット〜レセプションの時間を短くさせることです。もうひとつは、変化をうまく利用することである。ネット上で臨界速度となるような初速のボールをヒットします。
<チェックポイント>
[準備]
・ トスを安定させる
・ 踏み切り位置は適切かどうか
・ トスアップと助走動作開始のタイミング
[ヒッティング]
・ 体全体を効果的に使っているか
・ 打点の高さ
[フォロースルー]
・ ボールコントロール(スピード・コース・回転)
・ 着地位置
6)サーブの練習法
@ 剛球サーブの練習法
いきなりエンドラインから力をいれて打つと肩を痛めたり、ミスをしたりする恐れがあります。まずは、ネットまでの目測を計りながら、コート中ほどで50%の力でネットを越すことを目的にフォームをつくります。また、打つタイミングとネットまでの目測が計れたら徐々に後方に距離を伸ばし、3〜5本程度同じ要領でサーブを打ちます。肩が温まりタイミングも計れたらエンドラインに出て徐々に力を入れながらサーブを打つ要領で行います。
A サーブ練習法のポイント
サーブは自分自身でトスを上げて打つバレーボールのなかで唯一の個人技です。トスの高さや打つタイミングは自分自身で取らなければなりません。サーブの練習時間は、レシーブやスパイクの練習と比べると比較的短くなるが、一連の動作として習得できるまでできるだけ多くの数を打ち込むようにします。また、ただ単に自分でボールを拾って打つだけでなく、2人組、3人組でサーブを打つように工夫すると効率よく打ち込むことができます。
B 2人組の練習方法
一人がボールを3〜5個持ち、サーバーに1個ずつ渡します。サーバーは自分のタイミング、リズムで連続して打ちます。サーバーとボール渡しが交代します。この要領でセット数をこなすと効率よく集中して本数が打ち込むことができます。
C 3人組の練習方法
2人組の練習方法にボールを集める担当を、より本数を多く設定して打ち込むことができます。インターバルも取れるため、肩も休めることができます。また、本数、セット数を調整することで、レベルにあった方法を取り入れるとよいでしょう。
D 工夫した練習方法
ネット上のアンテナの上端にゴムを張り、ネットとゴムの間を通すように鋭い打球のサーブを打つことで、かなりの効果が得られます。その際、ゴムにマジックで印をつけるか、ビニールテープ等に数箇所印をつけて目印にし、相手コートに三角形のコーン等を置いて狙い練習します。